古上野の灰釉片口です。どっしりした厚みのある器胎で筒形に挽かれ、ロクロ目が強く表れており、高台も大きく削り出されており、縮緬皺の土味をよく鑑賞できます。側面に無造作に流しかけられた斑が花を添えている。素朴で野趣に富んだ姿は、上野焼初期を代表する釜ノ口窯らしさに満ちており、一種の基準と申せますが、こうした片口が伝世するのは稀と申せます。口縁は細かくホツれており、時代ニュウも見られ、米量に用いられていたのかもしれません。しかし、御覧の通りのたくましい姿を誇る片口ですから、そうした傷は一向に気にならぬように思います。やや大ぶりながら茶碗としても転用できるサイズ感であり、また酒器としては程々に容れて250㏄と嬉しい寸法。釉調の渋さも酒に合います。田中丸コレクションに同じく釜ノ口窯の灰釉耳付水指がありますが、筒状の素朴でどっしりした姿や釉調が共通です。
土ものの盃も良いですが、ぽってりした初期の白磁猪口などを取り合わせると、さぞや似合う片口ではないでしょうか。
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