きわめて珍しい、美濃青磁の輪花向付五客組です。一見して、江戸初期の美濃御深井作品かと思われそうですが、釉薬には明確な相違があり、明らかに青磁を意識した釉薬であることが分かります。かの大茶人、森川如春庵旧蔵の陶片中に、美濃青磁なるものがあることを以前から知ってはおりましたが(参考画像は可児郷土歴史館「弥七田織部展」の図録の如春庵所持の美濃青磁陶片です)、こうして伝世の美濃青磁を目にしたのも、手にしたのも初めてでした。実にシャープで、近代的な輪花形に、見込み中央には菊花の陰刻を押され、類を見ない、鮮烈な印象を抱かせる作品です。よくぞこうした珍品が、今日まで伝世されてきたものだと思います。どうかその価値を理解してくださる好事家の方に、橋渡しができれば幸いです。
コンディションは以下の通りです。1:古いソゲ三ヶ所とガタがあります。2:小さな古いソゲが少々見られますが良好です。3:古いソゲ二か所と小ソゲ少々。ややガタつきます。4:ごく小さなソゲ少々。5:ややガタつきがあり、古く浅いソゲが三ヶ所ほど。以上となります。古くから大切にされた証明たる江戸期の桐箱が伴うことと、共直しやニュウなどがないことは喜ばしいと考えております。
御売約ありがとうございました。