御本茶碗 玄悦

深い枇杷色をたたえて、なんとも落ち着いた風情の碗。侘茶の精神をそのまま体現しているかのようです。この御本茶碗の特徴は、高台脇に太く短い箆削りが二か所と、細く鋭い箆削りが一条めぐらされていることです。この削りは、いわゆる玄悦茶碗ならではといった印象ですが、腰が細く丈高に開いていく姿はむしろ茂三茶碗にも近い印象があります。玄悦と茂三の特徴を兼ね備えた、珍しい御本茶碗といえます。

旧蔵者はその土味から「砂御本茶碗」と箱に記しております。それも頷けるような砂気交じりの胎土が用いられております。土見せの高台内部には箆削りが見られません。スプーンで掬ったような高台内部の削りはいかにも御本らしい。そして釉肌の深い枇杷色、これほどまでに枇杷色らしい肌も得難いものかもしれません。茶がよく映える嬉しさが味わえます。口縁や高台に古い漆の押さえが点在し、古いニュウも三本見られます。そうした欠点はありますが、さりとて、この侘びた風情を前に、そんなことは些事とすら思えます。いかにも庶民が草庵にて茶を喫するための茶碗として、理想に近い姿といえるのかもしれません。

玄悦、茂三はともに対馬藩から釜山窯に赴いた人物名で、今日では一定の作行きを持つ茶碗の名称となっています。玄悦は椀形、高台から胴にかけての箆削り、高台は土見せ。茂三は低く華奢な高台から細く開いて立ち上がっていく姿。ともに独特の個性を持っており、御本茶碗において立鶴に次ぐ人気を誇っております。

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