吉田屋窯は大聖寺の豪商、豊田伝右衛門が文政七年(1824)九谷村に築窯し、その二年後、山代に移築して天保二年(1831)に廃窯するまでの合計わずか七年間のみ運営された、再興古九谷を代表する窯です。青手古九谷を倣い、緑と黄を主体とし、さらには紫や紺青を絵付に用い、それぞれの美しく溶けた発色のきらびやかな秀麗さは、古九谷に勝るとも劣らずといったところで、他の再興古九谷諸窯とは一線を画すものがあります。
吉田屋作品は、色のせめぎあう美を誇ることから絵付磁器を身上としますが、この度紹介する吉田屋の鉢は、緑釉のみで勝負しているシンプルな素文の大変珍しいものです。まるで新緑のあざやかさを彷彿とさせるような、健康的な緑釉が光る潔い作品であり、菓子鉢としてはもちろん、料理のうつわとしても珍重すべきものと思います。
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