きわめて珍しい赤織部の印判桐文平向付です。このような型紙による絵付けを施された赤織部があるものかと大変驚きました。小皿とも呼べますが、その品のよさから、平向付としての生まれではないかと推測しております。赤織部としての上がり、発色に秀でた愛すべき伝世の小品です。口縁にホツレや古い漆押さえが点在しますが、美濃陶として気になるものではありません。金銀繕いにしてあげても、美しくなることでしょう。寄せの平向付の一客に加えるのも面白そうですし、美濃陶の熱心な収集家にもお勧めできるような珍品です。
来歴:甍堂 古美術目録 所載品(1994年)