古芦屋と並び称される古天明手取釜です。古格横溢たる鉄味が見飽きぬ深い魅力をたたえており、侘茶数寄にはたまらぬものと言えましょう。眺めれば眺めるほどに、この中世の砂鉄の味わいがすばらしいと思えます。元来は庶民の道具であり、鉄瓶の祖形でもあります。その簡素なる美質ゆえに茶の湯の世界にとり上げられ珍重されたのは利休より以前の天文年間あたりでしょうか。そういえば珍堂秦秀雄も何かの本で「天文ごろまでの鉄器は一文字湯口、天正ごろの鉄器からは丸湯口になっている」と記しておりました。当品はいかにも古天明らしく一文字湯口になっており中世鉄器ならではの渋い古格を身にまとっております。
ミホミュージアムにて2016年に開催された「極 茶の湯釜 茶席の主」展覧会図録の70番に出展された細見美術館所蔵「古天明手取釜」が寸法も姿も類似しておりましたので参考に掲出しました。しかし当店の手取釜は巣穴や古い皹の金銀の鎹補修などがあり、そのやつれた風情が、なおのこと美しいものと思います。とくに鎹の金具は金と銀を交互に用いられており、古人の温かい愛情や洒落気が伝わってきます。500年近くもの間、大切に大切に受け継がれてきたものならではの姿です。この中世の珍器を侘茶の主たる道具として日々ご活用いただけると幸いです。御売約ありがとうございました。