古唐津山瀬窯の盃です。一般的な斑釉ではなく、胎土に鉄を塗布した上で斑釉を施しており、橙色の発色と、釉の濃淡に応じてかすかに青い発色が部分的に見られます。とても珍しいものでイレギュラーな作品かと思ったのですが、別冊太陽「気軽な茶道具」に同手品が石盃として紹介されており、どうやら一定の需要を受け少量生産されたもののようです。
口縁に浅いソゲが六ケ所ありますが丁寧に金繕いされており、またその箇所もあまり大きなものではないため、古唐津であることもあいまってさほど欠点には感じません。小ぶりながらも野趣に満ちた盃であり、ほとんど未使用の盃らしく、これから使い込むことで育ってゆく過程も楽しいでしょう。僭越ながら魯山人も好きそうだな、と思わずにはいられない愛すべき盃です。