絵御本茶碗です。絵御本、といっても鉄砂の点々を無造作に散らしただけで、絵と呼ぶのも大層なほどですが、いかにも李朝陶工らしい大らかさがただよう面白いデザインになっています。このような類例を見たことがなく、釜山窯に日本人がこれを注文をしたとは、いささか考えにくい気がするため、たまたま鉄絵具が付着してしまったために、どうせなら全体に付けてしまえ、という風に、イレギュラーに生まれた作品ではないかと考えておりますが、その真偽はさておき、口縁を内抱えにして丸みを帯びたフォルム、温雅な卵色の肌、いかにも日本人の美意識にかなう優しさをまとった姿は魅力的です。時代ニュウが二本ありますが、うち一本はほぼ目立たず、気になるダメージではありません。当時から、と思えるような時代感のある箱に収められ、この珍なる高麗茶碗が、大切に蔵されてきたであろう歴史を感じさせます。【SOLD】御売約ありがとうございました。