珍しい縄文土器の盃です。正確に言えばミニチュアの鉢で、鍔状の口縁に丁寧な線刻装飾が施されている祭器の一種でしょうか。「南蛮酒呑」として伝世しており、当時は正確な鑑定が難しかったのでしょう、須恵器などにも「南蛮」として伝世しているものを見たことがあります。
それにしても縄文土器の発掘伝世は、きわめて珍しいという他なく、しかも小ぶりで可愛いのが嬉しい。形もユニークで、帽子をひっくり返したような佇まいが楽しい。よほど長年使い込まれたのでしょう、土臭もあまりせず、水漏れもないので、酒盃としての実用が可能です。考古資料である縄文土器を酒盃にするなんて!とお叱りを受けるかもしれませんが、おそらく幕末明治ごろに掘り出され、以来そのようにして長く愛されてきたものですので、先人に倣い、縄文人の文化を掌に感じながら呑むのも一興ではないかと思います。まさに珍なる骨董の盃。
コンディションは良好で、嫌な補修やニュウなどなく、わずかな縁のホツレ程度です。画像ではわかりませんが縄文土器ならではのきらきら光る雲母が美しいです。箱にはつらつら謂れ書きと銘が書かれており、旧蔵家の愛玩ぶりがうかがえるようです。