なんとも凛とした、力強い姿の蕎麦茶碗です。通常の蕎麦茶碗よりも、やや大ぶりで高さがあり、一見すると青井戸茶碗かと見まごうほどのものです。肌の色合いもじつに高麗茶碗らしく、侘びた風情で、茶映りは申し分なく、高台まわりに梅花皮がよく表れているのも興味深い見どころ。桃山期の武将の手に似合うであろうな、と思わせるような一碗でしょう。時代ニュウが二本、鳥足状の金繕いが二か所、目立たぬ蛤傷が口縁に見られますが、そんな些細な欠点など一息に吹き飛ばすようなエネルギーをたたえた茶碗ではないか、と個人的に思っております。ご売約ありがとうございました。